所得税や相続税など、不動産にかかる税金の種類と計算方法

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不動産は、持っているだけで固定資産税がかかりますし、貸し出していれば所得税がかかります。ほかにも、所有者が変わる際には、贈与税や相続税、売却の際には印紙税や登録免許税がかかります。これら、マンションや不動産に関連する税金の種類とそれぞれの計算方法をご紹介します。

所得税や相続税など、不動産にかかる税金の種類と計算方法

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不動産には「税金」がかかります。持っているだけでも固定資産税はかかりますし、貸すことで家賃収入を得ていれば所得税がかかります。ほかにも、所有者が変わる際には贈与税や相続税がかかりますし、売却の際には印紙税や登録免許税もかかるなど、さまざまな税金があります。
ここでは、不動産に関連する税金の種類と、それぞれの計算方法をご紹介します。

マンションを持っていることでかかる税金の種類と計算方法

まずは、マンションを所有していることでかかる税金の種類と計算方法についてご紹介します。

固定資産税

固定資産税とは、土地や家屋、償却資産に対してかかる税で、基本的な計算式は下記のとおりです。

固定資産税=課税標準額×1.4%

したがって、固定資産税を計算するためには、前提として課税標準額を知らなければなりません。
課税標準額は、土地と家屋に分けて算出します。

<土地の課税標準額>
土地の面積とその土地の路線に面した宅地1平方メートルあたりの評価額(路線価)を掛け合わせて算出する。

<家屋の課税標準額>
家屋については、下記の計算式を用いて標準額を導き出します。

家屋の課税標準額=単位面積あたりの再建築価格×経年減点補正率×評点1点あたりの価額×床面積

再建築価格とは、その家屋とまったく同じ物を建築した場合にかかる建築費のこと。経年減点補正率は、使用年数に応じて下がっていく家屋の価値、評点1点あたりの価額は、家屋の資材費などの地域差を反映して算出した補正率を表しています。

課税標準額がわかったところで、先程の「課税標準額×1.4%」で計算します。
ちなみに、この1.4%という数字は、国が定めた標準的な割合で、各市町村によって税率が変動します。お住まいの地域によって確認が必要ですが、大まかな算出をするときは1.4%を基準にしてください。

都市計画税

都市計画税は、市街化区域にある固定資産に対して課税される税金です。計算式は下記のとおりです。

都市計画税=課税標準額×0.3%

税率は、ほとんどの地域で0.3%が採用されています。大まかな金額をシミュレーションしたい場合は0.3%で問題ないでしょう。

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不動産を運営する際にかかる税金の種類と計算方法

不動産を所持し、それを誰かに貸すなどして収入を得る場合は、前項で説明した固定資産税や都市計画税のほかに、所得に対する税金がかかります。

不動産収入に対する所得税

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不動産収入は、所得の中の「不動産所得」に分類されるもので、家賃、権利金などの不動産を貸し付けたことによる所得を表します。
不動産に限らず、所得を得た場合は所得税を納税しなければなりません。所得税額は、下の計算式で求められます。

所得税額=課税される所得金額×税率-控除額

課税される所得金額は、「総収入-必要経費」で算出します。必要経費は、不動産を貸し付ける事業を運用する中でかかる経費のことをいいます。
また、所得税の税率は、課税される所得金額によって変動します。

■所得税を算出するための税率と控除額

課税される所得金額税率控除額
195万円以下5%-
195万円超330万円以下10%97,500円
330万円超695万円以下20%42万7,500円
695万円超900万円以下23%63万6,000円
900万円超1,800万円以下33%153万6,000円
1,800万円超4,000万円以下40%279万6,000円
4,000万円超45%479万6,000円

・マンション運営による収入の種類
マンションの収入は、「家賃」がベースとなります。当然、空き部屋であれば収入はゼロとなりますので、自分の保有するマンションをいかに空けさせないかがマンション運営の本質的なミッションとなるでしょう。

家賃以外の収入としては、「礼金」「更新料」「管理費」「駐車場使用料」「携帯電話などのアンテナ基地設置料金」「自販機の設置による収入」などが挙げられます。
また、家賃収入の特殊なケースとして、滞納による家賃未収が挙げられます。これは、本来家賃として収入があるはずのものとしていったん計算します。また、その後に納入された場合は、事前に計上しているので、その時点では計上する必要はありません。何らかのトラブルで回収不可能だった場合は、損失として計上します。

また、居住者からの敷金や保証金などのうち、返還を要しないものや共益費も収入として計上する必要があります。

・不動産収入の経費になるもの
必要経費は、収入を得る過程で発生した支出です。所得税を計算するために、必要経費の範囲を確認しておきましょう。
マンション運営の必要経費としては、おもに「修繕費」「ローン金利」「減価償却費」「広告費」などの項目が挙げられます。
また、不動産保有者として支払う「税金」や「保険料」も経費になります。税金については先にご紹介した固定資産税や都市計画税が該当し、保険料は火災保険や地震保険などが経費対象です。
さらに、マンションのトラブル対策や清掃などの管理を管理会社へ委託する場合の業務委託料も経費になりますし、マンション売買の際にかかった司法書士や税理士などの必要な人員への報酬も対象です。

その他、物件の視察などに必要な交通費や知識を深めるための書籍代、不動産会社との関係を深めるための交際費などに関しても経費として計上できます。ただし、これらはマンション運営の常識を超えない程度を意識しなければ、税務署からの確認が入る可能性があるため注意が必要です。

不動産を売る際にかかる税金の種類と計算方法

不動産の運用をしている人は、持っている不動産を売却することもあるでしょう。ここでは不動産売却の際の税金についてご紹介します。

印紙税

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不動産売却をする際には、買主との売買契約が必要です。その契約書に貼る印紙にかかる税が印紙税です。印紙税額は、売却価格によって以下のように変動します。
また、2020年3月31日までのあいだに作成された契約書の場合、記載金額が10万円を超えるものに関しては軽減措置の対象となります。

■売却価格ごとの印紙税

売却価格税額税額(軽減措置)
10万円以下200円0円
10万円超50万円以下400円200円
50万円超100万円以下1千円500円
100万円超500万円以下2千円1,000円
500万円超1千万円以下1万円5,000円
1千万円超5千万円以下2万円10,000円
5千万円超1億円以下6万円30,000円
1億円超5億円以下10万円60,000円
5億円超10億円以下20万円16万円
10億円超50億円以下40万円32万円
50億円超60万円48万円

消費税

消費税は「費用×消費税率」で算出することができます。消費税の対象となる費用は、「仲介手数料」「司法書士への報酬金」「ローン完済時の手数料」などです。

譲渡所得税と控除

譲渡所得税とは、不動産の売却利益(譲渡所得)に課税される税金です。
不動産の売却利益を算出する計算式は下記のとおりです。

不動産の売却利益=(売却価格-売却時にかかった諸費用)-(購入時の物件価格+購入時にかかった諸費用-減価償却費用)

譲渡所得税の税率は、保有期間と譲渡所得額によって変わります。保有期間は譲渡した年の1月1日時点で、保有期間が5年以上であれば「長期保有」という扱いになり、税率は15%となります。
また、保有期間が5年未満の場合は「短期保有」という扱いになり、税率は30%です。

こうした売却時の税金については、一定の条件をクリアすることで、譲渡所得から最高3,000万円まで控除を受けられる特例があります。これを「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。
この特例を受けるためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

<居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例を受けるための条件>
・自分が住んでいる家屋を売るか、その敷地権を売る(今住んでいない家屋に関しては、住まなくなった日から3年目の12月31日までに売る)
・売却年から過去2年間に他の特例を受けていない
・災害によって滅失した家屋は、住まなくなった日から3年目の12月31日までに売る
・親子や夫婦など特別な関係性の人に売ったものでない

3,000万円の特別控除を受ける場合は、確定申告が必要です。その際、譲渡所得の内訳書と住民票の写しが必要になりますので、事前に準備しておいてください。

不動産の所有者が変わる際の税金の種類と計算方法

不動産は売却のほか、贈与や相続という形で所有者が変わる場合もあります。ここでは贈与税と相続税、それぞれの計算方法を確認していきましょう。

贈与税と計算方法

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贈与税は、無償で不動産を渡した場合にもらった側にかかる税金です。一方で、ある金額をもらって渡す場合は、前述した譲渡となり、譲渡所得税がかかります。
贈与税は1年間(1月1日~12月31日)のサイクルで計算します。不動産だけでなく、贈与されたすべてのものを加算した上で、確定申告して納税します。
贈与対象の特例として、市場価格より著しく低い価格で譲渡された不動産についても贈与の対象とするというものがあるため、この場合も贈与税の課税対象となります。

なお、贈与税には110万円の基礎控除がありますので、1年間に贈与された金額が110万円を超えない場合は贈与税の対象とはなりません。したがって、贈与税の計算式は下記のようになります。

贈与税=(贈与財産額-110万円)×税率-控除額

この計算式の「税率」と「控除額」は、贈与財産が「特例贈与財産」なのか「一般贈与財産」なのかによって変わります。
特例贈与財産の定義は、「直系尊属から1月1日時点で20歳以上である直系卑属に対して贈与されたもの」です。直系尊属、直系卑属とは、簡単にいうと血のつながった直系の家族であるかどうかということで、「曾祖父母・祖父母・父母」から「子・孫など」に対して贈与される場合などがこれにあたります。それ以外が一般贈与財産です。

特例贈与財産と一般贈与財産それぞれの税率および控除額は、下記のようになります。

■贈与税を算出するための税率と控除額

 特例贈与財産一般贈与財産
基礎控除後の課税価格税率控除額税率控除額
200万円以下10%-10%-
300万円以下15%10万円15%10万円
400万円以下20%25万円
600万円以下20%30万円30%65万円
1,000万円以下30%90万円40%125万円
1,500万円以下40%190万円45%175万円
3,000万円以下45%265万円50%250万円
4,500万円以下50%415万円55%400万円
4,500万円超55%640万円

この表からわかるように、直系家族からの贈与に対してかけられる税率および控除額は、一般贈与財産と比較して納税しやすいよう調整されています。

相続税の計算方法

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相続税の計算式は下記のとおりです。

相続税=不動産の課税標準額×税率-控除額

不動産の課税標準額については、前述した固定資産税の項目で算出方法をご参照ください。相続税の税率と控除額は、この課税標準額によって変動します。

■相続税を算出するための税率と控除額

不動産の課税標準額税率控除額
1,000万円以下10%-
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

上記の表を参考に相続税を納税します。ちなみに、不動産を相続する場合、不動産自体だけでなく、その不動産にかかるローンの残債も相続することを念頭に置いておいてください。

相続税対策の考え方

相続税対策として、不動産の購入が適しているということを耳にする方もいると思います。これは、先に述べた相続税の計算方法や不動産の評価額の算出方法が関係しています。

まず、不動産に限らず相続税を計算する場合、「遺産の評価額」という考え方があります。遺産の評価額は遺産の種別それぞれに対して条件が設けられており、その条件に基づいて算出されます。
この中で、預貯金は解約手取り額で評価額が算出されるのに対し、家屋は固定資産税評価額をもとに時価の4~6割という設定がされています。

したがって、預貯金を不動産購入によって不動産に変えた場合、遺産の評価額が下がり、支払う相続税が下がります。さらに、不動産がマンションだった場合は、土地面積内の占有面積を基に評価額を算出するため、そのほかの家屋よりも効果的な節税が叶います。

相続税対策に対する関心が近年より強まったのは、2015年の相続税に関する法改正があり、相続税が増税されたからです。その上昇幅をご紹介します。

■法改正前後で見る相続税の税率と控除額

 改正前

 

 

税率

改正前

 

 

控除額

改正後

 

 

税率

改正後

 

 

控除額

1,000万円以下10%10%
1,000万円超3,000万円以下15%50万円15%50万円
3,000万円超5,000万円以下20%200万円20%200万円
5,000万円超1億円以下30%700万円30%700万円
1億円超2億円以下40%1,700万円40%1,700万円
2億円超3億円以下45%2,700万円
3億円超6億円以下50%4,200万円50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

例えば、相続総額が5億円の法定相続人に子供が2人いる場合の相続税額を、改正前後で見てみましょう。

1人あたりの相続額:2億5,000万円

<改正前相続税額>
2億5,000万円×40%-1,700万円=8,300万円

<改正後相続税額>
2億5,000万円×45%-2,700万円=8,550万円

改正後は、納めなければならない相続税額が、250万円増えることになります。

マンション運営や売買に関わる税の種類はさまざま

マンションならびに不動産の運営や売買に携わるためには、多種多様な税の種類とそれぞれの計算方法を知っておく必要があります。
最終的にその不動産が自分にとって価値のあるものかどうかを判断するためには、税金の知識が必要不可欠です。自分がどのように固定資産を活かしていきたいか、今後のライフプランと併せてご検討ください。