「駐車場経営」とは?メリット・デメリットを解説

不動産投資には、アパート経営やマンション経営のほかに、駐車場経営という選択肢があります。駐車場経営は、比較的費用がかからず、初心者の方でも始めやすいことが特徴です。 ただ、手軽に始められるものの「どのようなリスクがあるのか」「収益は得られるのか」などの疑問はあるでしょう。本記事では、駐車場経営に必要不可欠な基礎知識や、駐車場経営のメリット・デメリットについて解説します。

この記事は約10分で読み終わります。

不動産投資には、アパート経営やマンション経営のほかに、駐車場経営という選択肢があります。駐車場経営は、比較的費用がかからず、初心者の方でも始めやすいことが特徴です。

ただ、手軽に始められるものの「どのようなリスクがあるのか」「収益は得られるのか」などの疑問はあるでしょう。本記事では、駐車場経営に必要不可欠な基礎知識や、駐車場経営のメリット・デメリットについて解説します。

「駐車場経営」とは…

駐車場経営とは、所有している土地を整備して、駐車場として運営することをいいます。
駐車場経営は高額な建物を建てる必要がなく、初期費用を抑えられます。加えて、後から土地が転用可能なため、初心者の方でも始めやすいという特徴があります。

なお、駐車場の経営方法として、主に以下の3つが挙げられます。

  • 一括借り上げ方式:駐車場運営のすべてを委託する
  • 管理委託方式:駐車場運営の一部を委託する
  • 自営式:個人で経営する

駐車場経営のメリット

駐車場経営も不動産の有効活用の選択肢の1つです。
駐車場経営のメリットとして、以下が挙げられます。

比較的低リスクで始められる

駐車場経営には主に、月極駐車場とコインパーキングがあります。

月極駐車場は舗装なしでも経営が可能で、設備投資が少ないことから、個人の方でも始めやすい方法です。一方、コインパーキングには計算機やロック板などの設備が必要です。ただし多くの場合、管理会社で一括借り上げする方式を取っているため、オーナーは土地を用意するだけで駐車場経営ができます。

土地の形に左右されにくい

普通乗用車を止められるスペースがあれば始められるため、土地の形に左右されにくいというメリットがあります。変形した土地や、住居を建てるには狭すぎる土地も、駐車場であれば活用可能です。

ただし、車が止めにくい駐車場だと、利用者に敬遠されやすいでしょう。そのため、駐車場内の動線を考えて、配置を工夫することが求められます。あまりに狭い土地であれば、バイク専用の駐車場にする方法もあります。

駐車場経営のデメリット

駐車場経営は手軽に始められますが、その分収益性が低く、トラブルが発生する可能性もあります。ここでは駐車場経営においてのデメリットを2つご紹介します。

実質的な利回りが低い

駐車場経営は、階層が複数ある集合住宅の経営と比べて、1フロア分の収益しか入りません。1区画の料金設定も賃貸住宅より低く、収益性は低くなります。立体駐車場を建てることもできますが、その場合は初期費用が上がり、メンテナンスや修繕費用がかかります。したがって、駐車料金とランニングコストを天秤にかけて経営していくことが重要です。

建物を建てられるだけの土地があるなら、駐車場経営とアパート経営のどちらを選ぶか吟味しましょう。

税制の特例措置が利用できない

駐車場は更地と同じ扱いとなるため、住宅用地と異なり固定資産税および都市計画税の特例措置がありません。

住宅用地に対する特例措置とは、東京都の場合であれば、小規模住宅地の場合は固定資産税が1/6、都市計画税が1/3に、一般住宅用地の場合は固定資産税が1/3、都市計画税が2/3に減額される制度です。

駐車場は、この特例措置が利用できないため税金対策には向いていないとされています。ただし、固定資産税および都市計画税は建物にもかかるため、建物を建てて特例措置を受けたとしても建物の評価額が高ければ、駐車場よりも税額が増える場合があります。

参照元:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)

駐車場経営のポイント

トラブルを想定する必要がある

駐車場経営には、盗難や車上荒らしなどの犯罪トラブルや、騒音や事故による近隣とのトラブルを防ぐ工夫が必要です。

管理をおろそかにすると、近隣住民や利用者からクレームがきたり、月極駐車場だと契約解除されたりする可能性もあります。

トラブルを起こしづらい管理体制と起きてしまった後の素早い対応が、トラブルを大きくしないためのポイントです。

監視カメラの設置や定期的な見回り、看板で警告などの対策を検討しましょう。

加えて、トラブル防止にかかる費用をあらかじめ見積もっておくことが重要です。
ただし、コインパーキングにして不動産会社や駐車場運営会社に委託すれば、巡回、清掃、入金管理・集金、事故やトラブルの対応といった管理業務を一部または全て任せることができます。

慎重な場所選びが必要

立地条件によって、収益に差が出やすいことも駐車場経営の特徴です。

周囲に人の集まる環境があり、駐車場が足りていない地域を選ぶ必要があります。また、「周辺の道路が広く通行しやすいか」「駐車場へアプローチがしやすいか」などの条件によって、利用者の集まりやすさが変わります。

加えて、トラブルが起きる確率を減らすため、治安のよい場所や、夜でも明るい場所を選びましょう。

駐車場経営の利回りの計算方法

利回りとは、出費に対して1年間で得られる利益の割合です。
利回りには以下の2種類があります。

・表面利回り:大まかな把握で用いられる
・実質利回り:詳細に把握したい際に用いられる

以下で駐車場経営における利回りの計算方法を簡単に説明します。

表面利回り年間賃料÷土地購入金額✕100(%)
実質利回り(年間賃料ー管理費用)÷(土地購入金額+初期費用)✕100(%)

一括借り上げ方式であれば、初期費用は管理会社が支払い、管理費用のみが請求されます。自営の場合は、初期費用・管理費用の両方を踏まえて計算してください。

さらに、駐車場の稼働率を計算して、地域ごとの平均稼働率と比較した方が、正確な数値がわかります。
稼働率は立地条件や駐車料金、設備によって異なるため、周辺の駐車場をリサーチしておきましょう。

では、駐車場経営にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか?
下記で、駐車場経営にかかる費用について、土地を「購入」する場合と、土地を「整備」する場合に分けてご紹介します。

土地を購入する場合の主な費用

土地を購入する際に発生する主な費用は下記のとおりです。

①土地代金
②不動産仲介手数料
③登記費用
④ローン借入れ費用

①土地代金
土地の特性や様々な条件によって土地の値段は大きく異なります。土地の適正価格は相場で判断できるものではありませんが、事前に国土交通省が公表している「土地総合情報システム」を参照し、周辺地域や似た土地の実勢価格や基準地価を調べて目安を知っておくことが大切です。

②不動産仲介手数料
不動産会社の仲介で土地を購入する場合、仲介手数料がかかります。手数料は土地の価格から3%〜5%程度が上限として定められています。

③登記費用
土地を購入すると所有権が購入者に移るため、所有権移転登記が必要です。登記費用は不動産における課税標準額の2%(軽減措置がない場合)です。そのほか、手続きを専門家に依頼すると2〜11万円程度の手数料がかかります。

④ローン借入れ費用
ローンで土地を購入するときは、事務手数料がかかります。

土地を整備する場合の主な費用

土地を整備するための費用は、主に以下の3つです。

①整地費用
②舗装費用
③設備費用

①②整地・舗装費用
更地のままでは車の重量に耐えられず、土地が凸凹になります。そのため地盤を掘削し、平坦にならしてから砕石を敷き詰めて整地する必要があります。

耐久性を上げる目的で舗装するのであれば、アスファルトかコンクリートで行います。アスファルト舗装費用は、約4,500円~5,000円/㎡かかります。コンクリートはアスファルトよりも費用が高く、約8,000円~10,000円/㎡かかります。

耐久年数や対応車両も違うため、どのようなタイプの駐車場にするかによってどちらを選ぶのがいいか検討しましょう。

③設備費用
設備がシンプルな駐車場であれば、車止めブロックや区画線の設置にかかる費用のみで済みます。

コインパーキングであれば、計算機やロック板、看板などの費用が別途かかります。ただし前述のとおり、コインパーキングは一括借り上げ方式が主流です。その場合、土地のオーナーが設備費用を負担することはありません。

駐車場経営における年収の目安

駐車場経営における年収は、経営状況によって大きく異なります。
駐車場経営で得られる年収は、以下の計算式で求めます。

月極駐車場(契約台数✕月間賃料-管理費用)×12か月
コインパーキング駐車枠数✕24時間料金✕稼働率✕365日-管理費用

例えば、10台規模の月極駐車場を月間賃料30,000円で提供し、管理費用は20,000円、常に満車だったとします。

この場合の年収は、(10台×30,000円-20,000)×12か月=336万円です。

ただし、これは常に満車だったと仮定しているため、1台でも空きが出てしまうと収益が下がります。

また、コインパーキングの場合は稼働率が年収に影響します。コインパーキングにおける稼働率は、「1日の間に駐車されていた時間÷24時間」で算出します。

例えば、10台規模のコインパーキングを24時間最大2,500円で提供し、稼働率は40%だったとします。コインパーキングの多くは運営会社に管理業務を委託するため、管理委託費用が売り上げの8%かかったとします。年間の売り上げは、10台 ✕2,500円✕40%✕365日=365万円です。ここから365万円×5%=182,500円が管理費用です。

この場合の年収は10台 ✕2,500円✕40%✕365日-182,500円=346万7,500円です。ただし、これも10台が1日あたり約10時間満車、かつその状態が365日続いたと仮定しています。

月極駐車場は、契約者が集まれば毎月一定の収入が得られます。収入は管理しやすいですが、空きが発生すると収益が大きく下がります。

また、コインパーキングの収益は単発であるため、安定しにくいことが難点です。しかし、駅前や商業施設の近くのような需要の高いエリアであれば、利用者は多くなり収益が上がりやすいでしょう。

投資に用いる土地選びについて

駐車場投資にとって、土地選びは重要です。他の不動産投資と同様、立地の影響を受けやすいでしょう。

どのような立地が失敗しにくい?

月極駐車場とコインパーキングでは、立地条件は異なります。

月極駐車場・マンション、アパートなどがある住宅街
・駐車場のない小規模施設の近く
コインパーキング・駅前やオフィス街
・大型商業施設や観光地、レジャーランドや公園の近く
・病院や銀行の近く

月極駐車場は、駐車スペースの少ない集合住宅や住宅街付近でのニーズがあります。

駐車場がない飲食店の近くでも、お客様用の駐車場として契約される可能性があります。

コインパーキングに適した立地は、不特定多数の人が集まりやすい場所です。需要の高いエリアでは一時駐車したいニーズに対して、1回の駐車料金を高く設定できます。

周辺環境・周辺駐車場の情報も重要

駐車場投資は、近隣に競合の駐車場があると、顧客の取り合いや価格競争に発展します。

そのため、土地購入前に周辺駐車場のリサーチが必要です。

競合が多すぎず、ある程度の需要が見込める場所を選定します。その際は、競合の料金設定や稼働率もチェックし、収入予測の参考にしましょう。

また、利用者にとって使いやすい場所かどうかも重要です。例えば、「商業施設に向かって出入口を設置できるか」「右折でも侵入しやすいか」などが挙げられます。

まとめ

駐車場投資は、初心者でも比較的簡単に始められますが、土地選びを慎重にする必要があります。駐車場は顧客単価が低いため、どれほど多くの顧客を集められるかが重要です。

駐車場の種類によって異なるニーズを掴み、安定した収益を得られるように土地を活用しましょう。