家賃滞納額「150万円」…自主管理物件が抱える恐ろしいリスク

家賃収入でローンを返済できるため、会社員や公務員にも広がっている不動産投資。安定した収入が見込める資産形成方法ではありますが、投資である以上リスクもあります。本記事では、事例をもとに家賃滞納リスクについて見ていきます。

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家賃収入でローンを返済できるため、会社員や公務員にも広がっている不動産投資。安定した収入が見込める資産形成方法ではありますが、投資である以上リスクもあります。本記事では、事例をもとに家賃滞納リスクについて見ていきます。

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家賃滞納「150万円」…自分で賃貸不動産を管理するのが難しい理由

ある不動産を相続した山本隆夫さん(仮名)は、亡き父貞雄さんの名義のマンションを自分の名義に相続登記を済ませました。 貞雄さんはマンション賃借人の高田博さん(仮名)に月7万円で貸していましたが、高田さんはもともとお金にだらしなく、収入もコロナの影響で減ってしまったため、なかなか家賃を支払う余裕がない状態のようです。滞納額は増える一方で、150万円を超えようとしています。

このマンションは、駅から5分の物件で、新しい入居者を探すのは難しいことではありません。山本隆夫さんは、定年も近づき年金だけでは心もとないため、この定期的な家賃収入が入るようにしたいと考えていました。

そこで、高田さんが支払ってくれないのであれば、連帯保証人に支払ってもらおうと契約書に記載されている高田さんの父に電話してみましたが、かなりの高齢で、認知症も進んでおり、話もよく理解できていない状況です。

管理会社に管理を任せようと考えていたこともありましたが、隆夫さんの父が自主管理をしていたので、そのままになってしまっていました。

そこでまず隆夫さんは、市役所で行われている弁護士の無料相談会に行ってみることにしました。 そこでは、弁護士の先生にまず入居者あてに配達証明付きの内容証明で「賃貸借契約を解除します。2週間以内に連絡がなければ訴訟します」という内容の通知を送るようにとアドバイスされました。

アドバイスの通りに送ってみたものの、まったく連絡も来ないので、隆夫さんは弁護士に建物明渡しと滞納家賃の支払いを求める訴訟の準備を依頼し、後日訴状を提出してもらいました。 裁判の期日にも高田さんは出頭せず、隆夫さんは勝訴判決を得ました。

その後その判決を理由に退去を求める通知を何度か送りましたが、返答がないため隆夫さんはマンションを訪問したところ、高田さんは応答せず、住んでいる様子もありません。 孤独死の恐れもあるかと考えた高田さんは警察に安否確認を依頼しました。すると、部屋のなかはごみ屋敷のような状態になっており、荷物や家具などはすべておいて逃亡した様子でした。 そこで、隆夫さんは強制執行の申し立てを弁護士に依頼しました。部屋の中にあるものは売却できるようなものはなかったため、滞納家賃は回収できず、部屋の荷物を撤去する費用、また裁判手続きにもずいぶん費用が掛かりましたが、現在は部屋をきれいにして新しい入居者が住んでおられるとのことです。

損失は予想以上に大きかった

今回、山本隆夫さんは約2年分の家賃を回収できず、荷物の撤去費用、裁判費用、クリーンニング等の費用で100万円以上かかってしまいました。 このようなケースを避けるために、賃貸借契約を結ぶ際にどのようなことに注意すればいいのでしょうか?

自主管理物件はリスクが大きい

昨今のコロナのように、予想もできないことがきっかけとなって、さまざまなトラブルが起こります。したがって、契約時に可能な限りの情報を集め、賃借人として付き合う程度の信頼に足る人物であるかを十分検討・審査しなくてはなりませんが、個人でその見極めや家賃の管理をするのは非常に大変でリスクがあります。

管理会社と契約する

そこで、信頼できる管理会社と契約し、審査や集金などの家賃管理を任せておくことでリスクを最小限に抑えることができます。 上記のケースでは、長期間の家賃滞納があったため、即時解約の通知をしていますが、借地借家法で借主を保護する規定があり、賃貸人側からの解約申し入れは6カ月前にしなければならないと定められています。 しかし、家賃を滞納している入居者に対しての解約の通知は、判例では「3カ月の滞納」を目安としています。

保証会社を活用する

入居者の信用情報も大切です。借金が多いなどの場合には、そちらの返済に追われて家賃を後回しにされることもあります。 そこで、家賃保証会社を利用することで、借金が多いなどの理由で、家賃を滞納する可能性が高い方の入居を防ぐことができます。 また、信用情報に問題がなくても、収入減や病気を原因として家賃を滞納する場合には保証会社から家賃が支払われるため、収益が途切れることがなく安心して賃貸経営ができるのではないでしょうか。

まとめ

今回のケースでは、残念ながら契約前の対策が取られておらず、滞納後の対応になりました。実際には、訴訟の提起から明け渡しが完了するまでは何カ月も要するため、費用だけでなく、時間や労力、そしてさまざまなストレスを伴うことになります。 このようなトラブルを避けるためにも、家賃滞納のリスクは、管理会社や保証会社を利用するなどして対策するようにしましょう。