サラリーマンの不動産投資は「賢い節税」である理由【税理士が解説】

副業の推進、公的年金への不安などにより、不動産投資を行う会社員、いわゆる「サラリーマン大家」が増加しています。しかし知識が不十分のまま不動産投資に乗り出してしまい、きちんとメリットを享受できていない人が多いのも現状です。 今回は不動産投資の節税でポイントとなる「減価償却」について、サラリーマンの節税相談で定評のあるトランス税理士法人の中山慎吾税理士が解説します。

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副業の推進、公的年金への不安などにより、不動産投資を行う会社員、いわゆる「サラリーマン大家」が増加しています。しかし知識が不十分のまま不動産投資に乗り出してしまい、きちんとメリットを享受できていない人が多いのも現状です。 今回は不動産投資の節税でポイントとなる「減価償却」について、サラリーマンの節税相談で定評のあるトランス税理士法人の中山慎吾税理士が解説します。 6

サラリーマンの不動産投資が節税につながる理由

不動産投資は、「減価償却費」という実際の金銭支出を伴わない税務上の経費を計上することで、節税することができます。 減価償却とは、不動産や付帯設備などの税法上認められている資産に関して、経年劣化で目減りする資産評価額を税務上の支出として計上できる仕組みのことです。 不動産投資で発生する赤字額(固定資産税・損害保険料・減価償却費・修繕費)は、サラリーマンの給与所得と損益通算できます。損益通算とは、不動産投資で発生した赤字を給与所得と合算して税務申告することです。 例えば年収500万円の人が不動産投資で50万円の損失を計上すれば、税金計算の際には年収450万円の人として扱われます。 減価償却費を計上してから損益通算することで所得を下げられるのが、サラリーマンが不動産投資で節税できる理由です。 「実際の金銭支出を伴わない税務上の経費」と言うと、脱法スキームなのではと不安を感じる人もいるかもしれません。しかし、減価償却費の計上は税法で認められているやり方であり、合法的な節税方法です。 減価償却費は、物件や設備の購入額を法定耐用年数で割り戻して、毎年1年分ずつ計上します。ただし、減価償却できるのは建物と認められた設備についてのみです。 土地は劣化しないという考え方から、土地の購入額は減価償却できません。 法定耐用年数は物件の構造と用途によって決まっており、国税庁のホームページで確認できます。例えば、購入した物件が木造戸建ての場合、法定耐用年数は22年です。 ※参照:国税庁 https://www.keisan.nta.go.jp/h30yokuaru/aoiroshinkoku/hitsuyokeihi/genkashokyakuhi/taiyonensutatemono.html なお、新築のRC造マンションに投資すると、法定耐用年数は47年と、1年当たりの減価償却費が少なくなるため要注意です。節税を意識して物件を選ぶのであれば、築年数と賃貸ニーズのバランスを考えることが重要です。 減価償却費を利用して節税するためには、重要なポイントが2点あります。1点目は建物と設備とを分けて減価償却費を計上すること、2点目は、減価償却費を計算するときに、減価償却の期間を正しく把握することです。 建物部分の購入費用だけではなく、建物に付帯する設備についても減価償却費を計上可能です。また、設備は建物と比較して法定耐用年数が短いため、1年当たりの減価償却費が大きくなります。 不動産投資において減価償却費を計上できる設備とは、主に以下のようなものです。 大半の設備は法定耐用年数が15年です。 ・照明等の電気設備 ・給排水設備 ・ガス設備 ・火災報知機などの防災設備 2点目のポイントとしては、法定耐用年数と減価償却費を計上できる期間とは異なるということを抑えておくことが重要です。 建物の法定耐用年数は、すでに解説した通りRC造の住居で47年・木造の住居で22年となっています。しかし、減価償却の年数については以下の計算式に則って計算します。 ( 法定耐用年数 - 経過済みの築年数 )+ 経過済みの築年数 × 0.2 例えば、築10年のRC造マンションを購入した場合の、建物部分の減価償却期間は以下の通りです。 ( 47年 - 10年 )+ 10年 × 0.2 = 39年 なお、減価償却年数を計算せずに誤った耐用年数で費用計上してしまうと、後から修正申告はできないため要注意です。過去に、国税不服審判所という機関へ、誤った計算方法で減価償却費を計上したため、確定申告のやり直しを請求した事例がありました。 しかし、減価償却期間を正確に計算しなかったことは、「計算の誤り」としては認められないという判断が下されています。万が一、減価償却期間を誤って8年間余分に長くすると、減価償却費はかなり目減りしてしまいます。減価償却期間は間違えないよう慎重に計算することが重要です。

年間約18万円の差が!サラリーマンが得られる税務メリット

ここからは、実際に減価償却費を計算することでどのくらい税務メリットを期待できるのか、例を挙げて解説します。 東京都内の年収900万円のサラリーマンが、築10年のRC造マンションを建物評価額1,950万円・設備評価額50万円で購入した場合の事例です。 ※減価償却費が全額赤字になる前提の計算であり、実際の税務計算とは異なります。 ・物件購入前の税額 所得税:900万円 × 33% ― 153万6,000円 = 143万4,000円 住民税:900万円 × 10% = 90万円 合計 :233万4,000円 ・減価償却年数の計算 建物:( 47年 - 10年 )+ 10年 × 0.2 = 39年 設備:( 15年 - 10年 )+ 10年 × 0.2 = 7年 ・1年当たり減価償却費の計算 建物:1,950万円 ÷ 39年 = 50万円 設備:50万円 ÷ 7年 = 約7万円 合計:57万円 ・損益通算 900万円 - 57万円 = 843万円 ・物件購入後の税額 所得税:843万円 × 23%※1 ― 63万6,000円 = 130万2,900円 住民税:843万円 × 10%※2 = 84万3,000円 合計 :214万5,900円 ※1年収が695万円から899万9千円までは税率が23%、年収が900万円から税率が33%になります。 ※2今回のケースでは、特別区民税6%・都民税4%の合計10%。 ・減価償却による節税額 233万4,000円 - 214万5,900円 = 18万8,100円 このケースの場合、18万8,100円の節税をすることができています。

まとめ

不動産投資で節税効果を大きくするためのポイントは、赤字によって所得税率を下げることです。節税を重視したい場合は、物件購入の前に自分自身の収入・税率・税額などを把握することが重要です。