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不動産投資では、節税方法を知らないと余計な税金を払うことになるため、大切な利益が目減りしてしまいます。しかし会社員の方は税金対策に不慣れなことも多く、どんな節税をすればいいか知らない方も少なくないかと思います。
この記事では不動産投資における節税の仕組みや、どうすればより節税できるかをわかりやすく解決していきます。無駄な税金の支払いを防ぎ、手元に残るお金を増やすための参考にしてください。
不動産投資が節税につながる仕組み
土地や建物を他人に貸して得た不動産所得には、所得税と住民税がかかります。
不動産収入-経費がプラスになれば他所得との合算により納税、マイナスであれば他所得から差し引くことになります。経費として計上することが出来るものと出来ないものを知っておく必要があり、それは納税・節税に大きく影響します。
不動産投資では家賃収入を減らさずに、会計上の所得を減らして節税する方法があります。しかも次の3つの仕組みを組み合わせれば、本業の節税も可能になるのです。
1.経費計上
2.減価償却
3.損益通算
経費計上で不動産所得を減らす
不動産投資で支払う固定資産税や火災保険料、修繕費などは、経費として計上することが出来ます。経費を増やせば所得額が抑えられます。
主に次のような費用が経費計上できます。特に最後の減価償却は不動産投資の節税でもっとも重要ですので、次の章で詳しく解説します。
■物件購入時
・不動産仲介手数料
・印紙税
・登録免許税
・司法書士報酬
・不動産所得取得税
・ローン手数料
■物件所有時
・ローン支払い利息(土地購入割合は除く)
・税理士委託費用
・雑費(物件視察や打合せに使用した交通費、飲食、宿泊、通信費。その他知識収集のための書籍代、セミナー参加料など)
・固定資産税/都市計画税
・火災保険料
・管理委託費
・修繕など維持管理費
・減価償却費
減価償却で節税効果を最大化
不動産投資で建物の節税のカギになるのが、減価償却です。減価償却とは、建物の取得でかかった費用を法定の耐用年数で割り、経費として計上できる仕組みです。
[図表1]建物構造別法定耐用年数
建物構造 | 法定耐用年数 |
木造 | 22年 |
軽量鉄骨(鉄骨の厚み3mm超かつ4mm以下) | 27年 |
重量鉄骨(鉄骨の厚み4mm超) | 34年 |
鉄骨鉄筋コンクリートまたは鉄筋コンクリート | 47年 |
出典:減価償却資産の耐用年数等に関する省令
マンションの場合、減価償却の対象となる費用は建物部分に限られ、劣化しない土地は償却できません。さらに、建物部分は躯体(建物本体)と設備(電気設備など)に区分されます。新築の場合は躯体47年・設備15年が耐用年数です。中古物件であればそれぞれから-経過年数×0.8(小数点以下切り捨て)を耐用年数として計算します。
たとえば鉄筋コンクリートの新築マンションを5,000万円で購入したとします。
ここでは分かりやすくするために、躯体が2,700万円、設備が300万円、土地が2,000万円、とします。
躯体の減価償却費は、2,700万円÷法定耐用年数47年で、およそ57.4万円を47年にわたり経費計上できます。加えて、設備の減価償却費は、300万円÷法定耐用年数15年で、20万円を15年にわたり経費計上できます。
これにより会計上の不動産所得を大きく減額でき、所得税・住民税が節税できるのです。
しかも所得税の税率は、1年の所得額が多いほど上がります。そのため初年で物件の取得費を全額計上するよりも、分散して計上したほうがより多くの節税になる可能性もあります。とくに会社員の方は次に解説する損益通算を利用すると、本業の節税も期待できます。
損益通算で本業所得も節税
損益通算とは不動産所得などと本業の所得を合算し、もし赤字があれば差し引ける仕組みです。これにより課税される所得金額が下がれば、本業を含めた所得税率を下げることができます。経費計上、減価償却を組み合わせて損益通算すれば、税金の払いすぎを防ぐことができます。
[図表2]所得税率
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円から194.9万円まで | 5% | 0円 |
195万円から329.9万円まで | 10% | 9.75万円 |
330万円から694.9万円まで | 20% | 42.75万円 |
695万円から899.9万円まで | 23% | 63.6万円 |
900万円から1,799.9万円まで | 33% | 153.6万円 |
1,800万円から3,999.9万円まで | 40% | 279.6万円 |
4,000万円以上 | 45% | 479.6万円 |
出典:「所得税の税率」国税庁
節税効果が高いのは新築物件と中古物件どっち?
新築物件と中古物件では、不動産投資の節税効果が異なります。
法定耐用年数を超えた中古物件は、「法定耐用年数×20%」で購入後の耐用年数を計算します。たとえば築25年の木造アパートは、木造の法定耐用年数22年×20%でおよそ4年が耐用年数となります。
また法定耐用年数のうち一部を経過した中古物件は、「法定耐用年数-経過年数×0.8(小数点以下切り捨て)」で残りの耐用年数を計算します。たとえば築30年の鉄筋コンクリートマンションは、鉄筋コンクリートの法定耐用年数47年-30年×0.8=23年となります。
いずれも新築より耐用年数が短くなるため、取得費によっては1年あたりの減価償却費が大きくなる可能性があります。より短期間で大きな節税効果を得るなら中古建物物件が有利といえます。ただし中長期的に見ると節税総額は新築のほうが有利です。
課税所得900万円以上の人は不動産による節税効果が大きい
課税所得が900万円を超えると、所得税と住民税の課税率は33%となります。不動産を5年以上所有し、売却した際にかかる不動産譲渡税率が20%であるため、不動産投資による節税効果が高まります。
なお、900万円は課税所得の金額であり、年収にすると1,200万円程度です。
課税所得が900万円以下、たとえば800万円の場合、所得税と住民税の課税率は23%です。不動産譲渡税との差が3%しかないため、大きな節税効果は期待できません。
まとめ
不動産投資はしっかり節税することで、手元に残る利益を増やせます。特に建物の減価償却は株式投資などにはないメリットであり、確実に活かしたい仕組みです。
不動産投資は、購入する方の職業や年収、将来の就業状況によって節税の観点として有利になる物件はを選ぶ必要があります。新築・中古・木造・耐火建築物など建物によって節税効果が異なります。そのため物件購入のときは、税金面の相談にものってくれる不動産会社を選ぶことをおすすめします。